APMAA 2014, APMAA 2013の大会記を以下に掲載しております。
アジア太平洋管理会計学会10周年記念(2014年度)大会を終えて
上埜
進
(Chair of the APMAA Board of Directors)
はじめに
海外18ケ国から60名余り、主催国であるタイから60名弱が参加したAsia-Pacific
Management Accounting Association (APMAA)のThe
10th Anniversary Conferenceが、南アジアきっての名門校であるChulalongkorn
Universityの主催により、2014年10月27日(月)から30日(木)までの4日間、開催された。会場は同大学に近いCrowne
Plaza Bangkok Lumpini Park, Bangkokであった。
Chulalongkorn Universityを俯瞰 |
日本からは13名が参加し、浅田孝幸(立命館大学)、木下徹弘(龍谷大学)、細海昌一郎(首都大学東京)、中島真澄(千葉商科大学)の各先生、および山本宗一郎氏(首都大学東京)、Lee,
Kwan Yuh
氏(首都大学東京)、そして私が報告した。辻
正雄(早稲田大学)、青木雅明(東北大学)、大鹿智基(早稲田大学)、塘 誠(成城大学)、森
勇治
(静岡県立大学)、金
宰U
(広島大学)
といった先生方も参加された。以下に、大会の様子を日別に記したい。
大会1日目(10月27日)
朝9時から学会誌Asia-Pacific
Management Accounting Journal(APMAJ)
のEditorial
Meetingがあり、続いてBoard
of Directors Meeting (理事会)に移り、2015年度大会開催国のインドネシア、2016年度開催国の台湾、
2017年度開催国の中国、2018年度開催国の日本という順序で、主催校によるプレゼンテーションが行われた。議事が終わったのは正午であった。午後から夕刻まで、Ph.D.
Colloquiumが行われ、採択論文6本につき、執筆者である博士課程学生による報告と、アドバイザーとなった先生方による論文指導が行われた。
夕刻から大会委員長であるChulalongkorn
UniversityのKanibhatti
Nitirojntanad会計学科長の歓迎挨拶を皮切りにWelcome
Receptionが始まった。本年度大会がAPMAA創設10周年記念大会であることから、冒頭に、Chair
of the Board of Directorsを務める私
(上埜)
が、APMAA’s
A Decade of Growth:
A Quick Look at Annual
Conferences という論題で今回までの大会を振り返るスライド報告を行った。レセプションが終わったのは8時であった。
大会2日目(10月28日)
2日目の8時50分から大会開会式が催され、Chulalongkorn
Business Schoolの学院長とChulalongkorn
Universityの副学長が祝辞を述べられ、2014年APMAA
President
であるYang
-Tzong Tsay国立台湾大学名誉教授が開会の宣言を行われた。続いて、授賞式が行われ、2010-2013年の4年間、APMAA
Presidentを務めた私にExcellent
Service Awardが授与された。
(↑ 10月28日午前の開会式後の記念写真)
午前9時半からはPlenary
Session Tに移り、招聘したThomas
Ahrens先生
(United Arab Emirates University, UAE)がTheoretical
Frameworks for Qualitative Accounting Case Researchという論題で講演された。同先生は
Contemporary Accounting Research
のassociate
editorであり、社会科学研究パラダイムの一翼を担うnon-positivist
approachに立つ学派のリーダの一人である。
午前10時45分から午後2時までは、今年で3回目になるパネル・セッションが、お昼を挟み、私をモデレータに開催された。本年度の論題は、Management
Accounting in Asian Emerging Economiesで、報告者の先生方に自国の管理会計の展開と現況、特徴を話して頂いた。Morning
SessionではGunawan,
Juniati先生
(Trisakti
University, Indonesia)がManagement
Accounting in an Emerging Economy: An Indonesia Perspectiveを、Chandrarin,
Grahita先生
(University of Merdeka Malang, Indonesia)がA
Brief Critical Review of Management Accounting in Indonesiaと題して報告された。また、Afternoon
Sessionでは、Wongkaew,
Wila-sini先生
(Chulalongkorn University,
Thailand)
がManagement
Accounting in an Emerging Economy: Thailand
Focusを、Chen,
Chao先生
(Fudan University, China)
がManagement
Accounting in an Emerging Economy: A Chinese Viewと題して報告され、各報告に対し討議者による熱い議論が展開された。2時半から5時までは、4会場に分れてparallel
sessions
が開催され、総数11本の論文報告がなされた。
この日の夜はConference
Dinner
が6時から催された。心温まる歓待があり、参加者一同は選りすぐりの食材からなるご馳走を堪能した。タイ王室にも招聘されているダンシング・チームによるパフォーマンスがアトラクションとして1時間弱にわたり華やかに行われた。さらに、次年度大会の準備委員長のSekar
Mayangsari先生がAPMAA2015の広報をなされ、同国から呼び寄せたインドネシアのダンシング・チームによるパフォーマンスと、委員会を構成する先生方による合唱が披露された。
タイ王室にも招聘されているダンシング・チームによるパフォーマンス |
インドネシアの先生方と私(中央左)ならびに辻
正雄早稲田大学教授(中央右):10月28日夜のレセプションにて |
大会3日目(10月29日)
3日目は全日parallel
sessionsに割かれ、12セッションで39の報告がなされた。日本の先生による報告が7件あった。中島真澄先生(千葉商科大学)は三本の論文を報告された。How
Should a Firm Fulfill Corporate Social Responsibility in a Crisis?(太田三郎氏との共同研究)は、企業が自然災害や金融危機といった危機において社会的責任をいかに果たすべきかを研究課題にしており、危機時のCSRを論じた。具体的には、中小企業が危機から再生可能か否かを判断するための社会的責任の測定フレームワークから導出したモデルを用いて測定した社会的責任指数値が企業の再生可能度を判定する目安を提供できると主張された。
また、奥田真也氏との共同研究であるImplication
of Internal Controls System and Accounting Information Systemは、経営者の内部統制に対する姿勢、経営者が考える監査の質、および財務会計システムについて、日本企業の現状を報告された。経営者の関与が内部統制の有効性や監査の質に及ぼす影響を検証した奥田真也氏との共同研究System
Integration, Management Involvement, and Quality of Internal
Controls and Auditingの報告では、経営者の関与が、内部統制の評価、監査の質の双方に正の影響を与えていると主張された。
木下徹弘先生(龍谷大学)はManagement
of HR Flexibility in Japanese Manufacturersという論題で報告され、日本の製造大企業210社の人的資源のコストおよび数量的柔軟性の変化を過去35年間のデータに基づき分析した結果を披露された。分析はバブル崩壊以前と以後に分けて行われ、知見は、「大企業の多くが、バブル崩壊以後・以前とも人的資源のコスト柔軟性をきわめて高く維持している、また、その数量的なコントロールは非柔軟的である」というものであった。
午後4時からPlenary
Session Uに移り、Bill
Chou
氏(CEO
of Apex Circuit (Thailand) Co. Ltd. and Apex International Co., Ltd)
が、Management
Accounting in a Turbulent Environment: CEO's perspectiveという論題で講演された。Apex
Circuit (Thailand) Co.は台湾からタイに進出した会社で、製品ラインをlow-end
productsに特化し、かつlow
cost operationを徹底することで価格競争力を強化するビジネス・モデルを採っている。同氏は自社のビジネス・モデルと経営管理体制の特徴を熱心に説明され、会場から多くの質問があった。午後5時から閉会式を行い、日本で制作したクリスタルの感謝楯を、私から主催校大会組織委員会のスタッフ一同とKanibhatti
Nitirojntanad委員長に贈呈し、研究セッションを終えた。
大会4日目(10月30日)
最終日は、Cultural
Visitということでバス・ツアが催され、午前中はバンコク・プラナコーン区にあるタイ王宮Grand
Palaceを、午後からはアナンタサマーコム宮殿を訪れた。王室と関係が極めて深い主催校の計らいでGrand
PalaceではChakri
Maha Prasat Hallの中にある国王の謁見室、晩餐会が行われるホールなどへの入室が許され、黄金と宝石がふんだんに用いられた豪華、かつ気品ある建築物に参加者全員が魅せられた。
(王宮Chakri
Maha Prasat Hallの前での集合写真、10月30日)
昨年秋から反政府デモが高まり政情不安が続いたことから、6月10日の論文投稿締切日までに寄せられた論文数は20点を切り、対応を迫られた。しかし、5月23日にプラユット陸軍総司令官がクーデタを宣言し、治安が回復に向かった。投稿期間の延長を指示し、かつ関係者一同に一層の努力をお願いしたことで、総報告件数64件、海外からの参加者60名余と、昨年の名古屋大会に近い規模で10周年記念大会を開催できた。海外参加者は、インドネシア(20人)、日本(13人)、マレーシア(6人)、中国(5人)、台湾(5人)、香港、シンガポール、モンゴル、ベトナム、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールといったアジアの国々と、オーストラリア、ニュージーランド、ポーランド、スウェーデン、カナダおよびアメリカからであった。"The
Land of Smiles"として世界に知られるThe
Kingdom of Thailandで開催した本大会は、暖かいホスビタリティに満ち、終わってみると、楽しい記憶に残る10周年記念大会になっていた。
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